プロジェクト紹介の最初のワークショップは全部で6校で行った。その中から4校を、モデル校として始めることになった。ここでやろう、ここではやらないと決めたわけではなく、JICAの援助で大型ゴミ箱を購入することになった時、ある程度準備のできていたのがこの4校だったっというもの。
U.E Aniceto Arce turno mañana (アニセトアルセ午前学校) 小学校1~8年生
ー カウンターパートが校長を紹介してくれた学校。町中の中心部にあって庭はなく、すべてコンクリート詰め。
U.E Anceto Arce turno tarde(アニセトアルセ午後学校) 小学校1~8年生
ー 建物をシェアしているのだから午後の学校でも始めた方がいいという午前の学校の校長の希望で話をしにいって、了解してもらった学校。
U.E Carmen Mealla turno mañana (カルメンメアジャ午前学校) 小学校1~5年生
ー カウンターパートの紹介。校長先生はオルガ(大家さん)の友人でもある。町中だけど、川沿いにあって、庭になりそうな小さい敷地がある。
U.E Humberto Portocarrero 2 (ウンベルトポルトカレロ2学校) 高等学校9~12年生
ー 先生向けの研修を行った学校の生物の先生が自分が教えている別の学校でやってみないかと校長先生にも話を通してくれて、始めることになった学校。町外れにあって大きな庭がある。 プロジェクトは何度か書いているけれど、いたってシンプル。掃除時間の導入、ゴミの分別、リサイクル。最終目標は有機ゴミからコンポスト作りで、私がとてもやりたいことだけれど、これは第二段階。先生向けの研修はタリハのゴミ問題と現状、プロジェクトの説明と目標、日本の学校での取り組み、タリハの学校での始め方を紹介するもの。私のプレゼンの後は先生たちに意見を言ってもらう。学校全体で取り組まないと意味がないこと、一人ではできないこと、どの先生にも協力してもらわないと成り立たないことを伝えるから、先生たちも言いたいことをばしばし言う。
タリハ市の人々の環境意識は高い方だと思う。実践できているかは別にして、ゴミはゴミ箱へ捨てよう、環境を守ろうといったことはよく口にする。だからプロジェクト自体は好意的に受け入れてもらえる。ただそれに伴うもろもろの仕事が自分たちにふりかかるとなると話は別。それを受け入れてもらわなければならない。保護者が文句を言ってくるかもしれない、学習時間が減る(月に2・3回はある行事を減らせばいいと思うのだけど。なんせ全てを学校で祝うのだ、ここボリビアでは。カーニバル、タリハの日、海の日、父の日、母の日、先生の日。行進したり、ダンスしたり。もちろん授業はない・・・)など尤もな意見がでる。それに対して、保護者説明会を行う、時間は10分だけ、など1つずつ答えていく。上記の4校以外の何校かでも同じ研修を行ったけれど、最終的にはどの学校もやってみようということで研修は終わる。
この研修後がなかなか進まなかった。2・3月はカーニバルに向けて学校は大忙し。プロジェクトに割く時間はない。その後教員のデモで学校が10日近く休みに。実際に動き始めたのは3月の終わりだった。それでもちょこちょこ学校へ出かける中で、先生たちのつくる保健委員会があったり(なかったり)、生徒会があったり(なかったり)、Portero(用務員さん)が責任感ある人だったり(ない人だったり)といったボリビアの学校の様子、4つの学校それぞれの特徴がわかってきた。
3月の終わりから4月にかけて、特に学校内で協力してくれる先生たちを見つけることに費やした。保健委員会のある学校ではその先生たちと、ない学校では理科課の先生たちを中心に・・・何度もミィーティングを繰り返す。時に校長先生を交え、時に全体の先生を集めて話をしながら。頼りになる先生が誰なのかが少しずつわかってくる。私にとっても手探り状態。4校で始めたのはとてもよくて、一つの学校でうまくいったことを別の学校にも適用できる上、校長先生や委員会の先生もあっちではどんな感じなの?とライバル意識ではないけれど、ちょっと気にしたりもする。この間、他の先生たちには各教室におく3つのゴミ箱を用意してもらう・・・ことになっている。
4月後半から5月にかけて生徒向けの授業を開始した。アニセトアルセ午後学校だけ以前に入っていたNGOのおかげでベースはできているので、授業はしない。残りの3つの学校で計38クラス、約1500人相手に授業をした。小さい子供には紙芝居を使って、大きい子供にはパワーポイントで写真を見せながら。最後に必ず学校ででるゴミ(本物)とゴミ箱3つを使って分別の仕方を実践。高校生向けにはゴミの分解年数など知識的なことも入れる。年齢によって少しずつ内容を変えているものの、同じことを38回繰り返すとさすがにあきる。けれど、子供・生徒相手に授業できるのは楽しかった。
珍しい外国人ということもあって、熱心に聞いてくれる。クラスごとに特徴はあって、賑やかなクラス、とても静かなクラス、一生懸命きいてくれるクラス、私語の絶えないクラスなど様々だけれど、反応は良好。もちろん実際にできるかは別の話だけれど、このあたりはたぶん日本も同じだ。しゃべる分には問題ないけれど(38回もするから!)、生徒の、特に小さい子供のスペイン語はなかなか理解できない。彼らは手加減せず、容赦なくしゃべりかけてくる。別の言葉に言い換えてくれたりしない。ふーん、そうなの、よかったね、など感覚で返事するけれど、答えのいる質問だと大変だから、授業には必ず先生が一緒に来てくれるようにお願いする。時にそれを口実にする。先生によっては授業がないなら、これ幸いと帰ってしまったりもするから。このあたりのことは来たばかりの頃に行っていた2つの学校で経験済み。
毎週月曜日、学校で”Acto Civico de Saludo a Bandera ”と呼ばれる日本でいう朝礼のようなものがある。運動場に整列、国旗へ敬意を示し、国歌を歌ったあと、先生たちからの話や生徒会からの連絡がある。学校によって少しずつ形態は違うけれど、タリハの学校ではたいがい行われているよう。このActo Civicoにおいて、5月9日にアニセトアルセ午前学校とカルメンメアジャ午前学校で、16日にアニセトアルセ午後学校とウンベルトポルトカレロ2学校で、校長先生がプロジェクトの開始を宣言した。私も壇上に立ってよろしくと挨拶する。分別とリサイクルを通してゴミの量を減らし、今まで取り立ててばかりきた大地に自然な栄養分を返していくことで、環境に害を与えない学校を作っていこうと。
・・・と書くと大層格好よく聞こえるけれど、現実は甘くない。一週間早く始まった二つの小学校。まず2ヶ月もあったのに?ゴミ箱が3つ(段ボール箱でよい)揃っていないクラス、掃除時間と決めた時間に掃除をしないクラス(別の時間帯にしたり、全くしないクラスもある)、分別が全然できていないクラス、ジュースが入ったまま捨てられてぐちゃぐちゃになったゴミ箱をコンテナまでもってくるクラス、なぜか1時間も使って大掃除するクラス・・・。単発もののイベントに慣れているボリビアの先生たちは毎日続けるということが想像できないよう。これも一つのイベント、なんとなく過ごせればいいと思っている先生も少なくない。数日後経過を見にいった日はため息がでる思い。中心になって真面目に取り組んでいた担当の先生は全然なってないと半分投げ出しかかっている。準備段階から予想はしていたものの、やっぱりかという感じ。道程はまだまだ長い。それでも、担当の先生がこれではだめだと思ってくれただけいいのだと思う。これは違うと感じてくれるから、先が繫がる。まだまだ始まったばかり。
Acto Civico de Saludo a Bandera |