定期的な職員朝礼や会議がない。会議室どころか職員室がない学校もある。先生は出退の時間を記録する台帳にサインする時、または10分の休憩時間に、秘書室と職員室が一緒になったような部屋にやってくる。日々の連絡事項を伝えるのはこのときくらい。休み時間に教室から降りてこない教員もいるから全員の先生に周知徹底することは難しい。そもそもほとんどの教員は用事でもない限り、自分の授業がある時間にしか学校に来ない。授業時間外に学校へきて別の仕事をするなんてことはよほど意識のある先生でないとやらない。小学校ですらそうだから、高校になると更にひどくて、講師だけで学校で成り立っているようなもの。もちろん、連絡事項をボードやノートを使って知らせる工夫はしているけれど、そんなの聞いてなかったわよという先生も多い。先生同士で教えあったり、情報を交換したりする機会は限りなく少ない・・・。
これはボリビアの先生達のせいだけではない。先生がじっくり仕事に取り組める環境が整っていない。働き始めたばかりの先生の給料は月1200Bs、25年間働いたベテランの先生でも4000Bsに満たない。日本円にすれば、4万5千円ほど。いくら物価が安いとはいっても、生活に余裕はない。多くの先生は子供を抱え、学校は午前か午後にしかないから迎えにもいかなければならない。お昼ご飯が一日の中で一番大事な食事だから、それなりに気合いをいれて料理もしなければならない。授業以外の仕事を求めるのはやっぱり酷だと思う。せめて、午前の学校なら午前中、午後の学校なら午後の間は先生達が学校にずっといて、仕事に専念できるシステムができればいいのだけれど。
そんな中、協力してくれる先生達には本当に感謝したくなる。始めたばかりの頃、学校にいくと2人の先生が軽く言い争っていた。1人の先生が中身のジュースが入ったままでぐちゃぐちゃになっているのだからと、分別されたプラスチックの袋をみんなEMATが回収する埋め立て地行きのコンテナに移した。もう1人の先生はそれでもせっかく分別できてるんだから、今回は洗ったらいいじゃないと力説。そして自分で何百枚ものジュースの袋を洗い始めた。なんとかなるんじゃない、と初めて思った。
校長先生や担当の先生たちと集まって対策を考える。校長先生にやる気があること、一所懸命な先生がいること、これがなければ何も出来ないことをしみじみと感じる。この対策を考える会?も多くの場合授業時間に行われる。校長先生は気軽に担当の先生を呼び出してくれるけれど、その間生徒はどうしているのだろうか、気が気ではないから、なるべく昼休みに合わせて出かけ、手短にすませられるようにする。
校長先生や担当の先生たちと集まって対策を考える。校長先生にやる気があること、一所懸命な先生がいること、これがなければ何も出来ないことをしみじみと感じる。この対策を考える会?も多くの場合授業時間に行われる。校長先生は気軽に担当の先生を呼び出してくれるけれど、その間生徒はどうしているのだろうか、気が気ではないから、なるべく昼休みに合わせて出かけ、手短にすませられるようにする。
こうして決めたことを一番たくさんの先生たちが学校に来る日、休み時間に集まってもらって伝える。いない先生には秘書の女の人から伝えてもらえるようにお願いする。プロジェクトを始めるからとゴミと分別の授業を行い、子供たちに堂々と開始宣言をしたのに、先生たちが責任をもってイニシアティブをとらなければ、子供たちもそれでいいのか思ってしまうよと(自分が聞いたらかなり耳の痛いことを^^)言ってみる。このあたり、ボリビアの人達はとても素直。うなずきながら聞いてくれる。(聞くだけ・・・が多々なことは横において。)
それでも、少しずつ状況がよくなってきた(と思う)。休み時間、掃除の時間、放課後、様々な時間に学校に顔をだしてみる。子供達に話を聞く。先生に声をかける。熱心な先生は最初から本当に熱心にやってくれて、頭が下がる思いがする。ほとんどの教室にゴミ箱がそろった。音楽が鳴り始めて少しするとごみ箱をもった子供達が降りてくる。まだ全クラスではないし、分別も完璧ではないけれど、数が増え、3種類のゴミ箱を抱えている。コンテナの横に、常に分別を手助けしてくれる人がついてくれる。何より担当の先生にどう?と聞くと、ましになってきたわと、笑顔がある。
一週間後、アニセトアルエ午後校とウンベルトポルトカレロ2校が始めた。アニセトアルセ午後校は校長先生がかなり厳しい人。私が特に何をせずとも、学校でできることをしっかり把握して、先生を、生徒を動かしている。ゴミ箱がまだ揃えられていないから、今はプラスチックのみを分別すると決めた。以前NGOが入ってやっていたプロジェクトの名残で、子供達はジュースの袋を最後まで飲みきり、しわをきちんと伸ばしてクラスごとに集めて持ってくる。たまに顔をだして、こちらがアイディアを盗む、3つめのゴミ箱をそろえ、紙もリサイクルしてくれるように声をかける、くらい。
暑い! |
リサイクル業者が回収にきた。計57Bs |
1年目はお試し、実験、試行錯誤。冬休みに入るまでに1サイクルやってみたいと思っていたことがなんとかできそう。2年目はやってみたいという学校を募ること、継続してもらえるよりよい方法を考えること、ただリサイクル業者にもっていくのでなく、コンポストや紙作りをすること、そして・・・と夢想は続く。4校とも今はそれなりに改善していっているようだけれど、まだまだ問題がでてくる気がする。これから長く続けていこうと思えば、システムとしては弱いし、校長先生と担当の先生がいなくなれば、2・3人のとても意識のある先生が続けるだけになってしまうだろう。ゴミとリサイクルにこだわらず、色んな教科と関われる方法をもっと考えないと。
今回この掃除、分別、リサイクルのシステム作り(便宜上プロジェクトと呼んでいるけれど)を始めて、自分が学ぶことがとても多い。自然と調和して生きるということ、それは言葉でいうととてもきれいだけれど、現実には虫やみみずやカビ、その他もろもろの生き物、今まで袋にいれて蓋をしてきた、ほうっておけばすぐ腐って臭うゴミや動物の糞と顔をつきあわせることでもある。環境教育の一環としか見なしていなかったこのプロジェクトを通して、人間のとても本質的なことを伝えられることを今更ながら思った。あるクラスは先生が掃除を罰として用いていた。それでは、一番大事なことを子供達が学ぶことはないだろう。肝心なことを伝えきれていなかった。きれいに掃除をした後の清々しさ、ものを大切にする精神、自然の移り変わりを敏感に感じとる心、人をもてなす気持ち・・・。8年近く続けてきた茶道の基本でもあるのに、普段の生活と結びつけて認識できていなかった気がする。
子供達の発表は続く。1年生から8年生まで学年ごとに。マイケルジャクソンの曲に合わせて踊ったのは4年生。チャカレラは3年生。5年生の男の子は慣れた態度でフォルクローレの歌を歌い上げ、上級生はボリビア各地の伝統舞踊を披露した。発表は1時間半ほど。11時に子供達が帰った後、先生チーム対お母さんチームでバスケの試合。観戦していたフランス語の先生は先生チームは体が重いな、おかあさんたちは若いと失礼な感想をいっている。そして昼食会。Picante de pollo (ちょっと辛いソースを絡めた鶏肉)。お腹いっぱいになった。宴の後Patioをチェック。ゴミはやっぱりある!けど・・・以前よりずっと少ないような。そう思うことにした。