9月26日月曜日、電話による連絡網で28日から行われる予定だった健康診断、安全対策会議、総会が延期、もしくは中止になる旨が通達されました。総会ではサンタクルス市民に向けたフェリアを開催予定で、そのための準備を長くしてきたこと、仲間と会う機会を楽しみにしていたこと、と二重にがっかりだったのですが、タリハにいるとそれほど実感はないものの事態は深刻です。
政府がベニ(サン・イグナシオ・モホス)とコチャバンバ(ビジャ・トゥナリ)間に通そうとしている道路がイシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区、TIPNIS(Territorio Indígena y Parque Nacional Isiboro Secure)を横断することに反対し、先住民グループがデモ行進をし始めたのが8月。TIPNISの人々が自分たちの生活を守ろうと立ちあがったのを他の先住民たちが応援し、さらにそれをサポートとする学生、市民団体、NGOが加わって大規模なものになりつつありました。9月25日、この先住民の行進がTIPINISからラパスへ向かう途中にあるヤクモ(Yacumo)という町に到着した時、警官隊が介入し、催涙ガスなどを使用して死者、けが人、そして大勢の逮捕者がでました。行進には家族連れも多く、子供が亡くなったという話も伝わっています。ヤクモの町は行進に反対しており、この介入は先住民のグループとヤクモの人々との争いを避けるためだったと言われていますが、これにより多くの人々の同情が先住民グループに集まり、26日全国的なデモが行われたのです。総会開催予定地のサンタクルスのプラザでも大勢の人々が集まったとのことで、中央から離れ常に穏やかなタリハでも学校が休校、先生達も大勢デモに参加しました。
この事態を受けての一連の会合の延期または中止の連絡です。実際26日の昼間、テレビを見ていると騒然とした現場の様子が伝わり、本当に事態が悪くなってボランティア全員引き揚げ・・・という状況にもでもなったらどうしようという思いがちらりと頭を横切ったくらいだったので、その後まわってきた電話の内容に、がっかりはしたもののある程度覚悟はできていました。そしてその夜。大家さんオルガと一緒に見ていたニュースで、モラレス大統領が道路建設の中止を宣言しました・・・・この宣言がまた唐突。全国規模のデモに根負けしてのその場しのぎという事情が丸わかりで、年末年始にかけてのガソリン値上げ問題Gasolinasoを彷彿とさせ、モラレス大統領の評価は(私の中で)地に落ちたのでした・・・。
このTIPNISの話はデモ行進が始まった頃に前後してよく話題に上っていたし、友人の中にはこのデモ行進に参加するためにベニまで出かけた人もいます。オルガともよくニュースの話をしていました。それでもはっきりしなかったのが、TIPNISの人々の生活を保障し、道路の建設がもたらす利点を伝え、自然をなるべく損なうことなく道路を通す道はなかったのかということです。事態がここまで大きくなる前になぜきちんと話をしなかったのだろうと不思議でした。道路が通される予定地には50家族ほど、それほど多くの先住民が住んでいるわけではないと同僚は言います。それでも時間がたつにつれ、少しずつこのTIPNISにまつわる問題の複雑さがみえてきました。
大統領の言い分は、このTIPINISを縦断する道路が通されればアマゾンというジャングルに閉ざされているベニ県とパンド県の経済的発展を助けることになるということです。友人たちがベニのサン・イグナシオ・モホスを訪れた時、雨が降って道路が泥の川となりバスが動かなくなって、泥まみれになりながら次の村まで歩いたとのことでした。さらに奥のパンド県へ行くのはもっと難しいのです。アクセスがよくなれば生活の基本である教育や医療の手もより届きやすくなります。道路の建設が実現できればベニ県にあまりあるおいしい牛肉(トリニダ在住の仲間談)をはじめとした特産物を簡単に都市部に輸送できるという利点もあります。自然破壊ということを考えれば、道路が通されない方がいいけれど、これはこうした道路によってもたらされる生活の便利さを享受している町の人間が一概にどうこう言えないことだと感じます。
先住民の人々の心配は道路の建設に伴う人の移動です。ボリビア高地で行われているコカの栽培は土地の劣化に伴い、生産量が減少しているという話もあり、道路ができることでTIPNIS内にコカ栽培者が入植し、コカを生産し始めるのではないかと心配しているのです。コカの栽培を行うのは主にアイマラの人々であり、その合法性を認めているのはアイマラ出身の大統領です。これにより大統領は国際的な非難をあびてもいます。入植者がTPINISに入って来始めた頃、入植者側代表者としてTIPINIS側の代表者と交渉をしたのは大統領にある前のエボ・モラレスだったそうで、入植者側(多分コカ栽培を行うアイマラの人々側)であるモラレスが今大統領であるという権力にものを言わせて、自分の代表する民族の利益のために働いているととられても仕方ないといえます。そして実際にそういう部分はあるのだと思います。そうなると大統領が言うベニとパンド県、TIPNISの人々の発展のためという歌い文句がうさんくさく聞こえてきます。TIPNISの先住民は土地を奪われる可能性もあるのです。加えて、今回の工事を落札したのはブラジルの会社。TIPNIS内には石油があり、その採掘と輸送、そしてボリビアの安価な品物と労働力をブラジルにいれるために道路をつくりたがっているという話もあります。石油関係の人間のためどころか、麻薬密売人のための道だという人もいます。
同僚はTIPNISの先住民たちは僻地での自分たちの生活をかえたくない、なぜなら僻地であるからこそ各国のNGOが入ってくるけれど、道路が通ってしまえば生活が変わってしまい、援助が届かなくなることを恐れているのだと言います。援助が途切れることを恐れているかはともかく、私たちの目からみて「文明化」されていないにしろ、彼らが慣れ親しんできた昔ながらの自分たちの暮らしを変えず守りたい気持ちは何より強いものでしょう。そしてNGO等によって行われた調査によると、この道路の建設が世界で最も豊かなものの1つと言われるTIPNISの多様な生物種に与えるダメージは相当大きいとのことです。
一方モラレス大統領はこの先住民の行進は反米を大っぴらにしている現政権を転覆させようとするアメリカやアメリカの息のかかったNGOが扇動しているのだと主張しています。必ずしもTIPINISの先住民の願いを体現したものではないと。ボリビアに来る前、アメリカがいかにラテンアメリカ諸国の政治経済に介入してきたか、アメリカの多国籍企業がどれだけ搾取を続けてきたかという本を数冊読んできた私には、これも実際のところありえるのかもしれないと思ったりもします。けれどもこれがTIPNISの人々の主張を無視する理由にはなりません。
ボリビアにはアイマラ・ケチュアなど多数派の先住民、TIPNISの人々をはじめとする少数の先住民、先住民の枠でくくられないボリビア人・・・それぞれの間で色々な考えの違いがあり、そこが多民族を抱えるボリビアの難しさなのだと改めて感じます。同じような問題がタリハでおこったら、タリハの人々の反応も全然違ったものになるはずです。周辺国やその他の国、NGOや企業、それぞれの利益団体にそれぞれの思惑があります。それでも少数の先住民のために多くの人々が立ちあがり、関心をもっていることはいいことだなと感じます。
大統領はボリビア多民族国家と国名を改め、ボリビアの数多い先住民の権利を尊重するそぶりを見せながら、結局自分の出身民族であるアイマラ族のことしか考えていないのだという批判をタリハでよく耳にします。外向きの言葉だけいいから諸外国はそれに騙されていると。先日オルガのお姉さんエルヴィラとドイツ人の旦那さんのヴォルフカンと話していた時、エボ・モラレスが自然保護区、もしくは先住民テリトリーに関する法律を変える法案を議会にかけていると言っていました。国連で母なる大地(Madre Tierra)の権利について演説してきたばかりの大統領がこの行動。矛盾する言動が多くて、大統領への信頼が失われていくのがわかります。
10月11日現在も先住民の行進は続き、まもなくラパスに到達しようとしています。この行進を止めるため、軍が出動する可能性は十分あり、そうなったとき惨劇は避けられないとオルガは心配しています。今までの思いつきだけのような行動から多少まぬけな?印象があるけれど(オルガいわくエボ・モラレスは高校も卒業しておらず無学なのだとか)、エボ・モラレス大統領のMAS党は議会の大半を占め、軍部との折り合いも良好。この法案を通すことはたいして難しいことではなく、これを契機に彼がより独裁者としての要素を強めていくことも考えられます。「先住民出身初の大統領」という言葉に込められた希望をエボ・モラレスが裏切らないでくれるといいなと思います。
TIPNISの先住民を後おしするために行われた26日のデモ。教員組合はじめその他の組合も参加して大きなものになりました。反モラレス大統領の動きが大きくなったともいえます。突然の道路建設停止宣言はこれをおさえるためと思われます。この後10月6・7日にもデモが行われるとか、行われないとかいう噂があり、多くの学校が休校になっていました。これがなんのためのデモかは、実際あまりにもデモがしょっちゅうありすぎてボリビア人達も興味を失っているのか、同僚もニュース見なかったからわからないわ、と言うほどで、はっきりしないまま。TIPNIS関係ではないらしいのですが。
折しも、この日職場SEDUCA(教育事務所)は大勢の先生達でごった返し、友達からSEDUCAで(に対して?)デモがあるの、と聞かれたくらい。実はエボ・モラレス大統領が教員1人1人にコンピューターを配布することを決め、これを手に入れるために必要な書類を求めて先生達がやってきているのです。例のごとく、コンピューター配布の日程とその方法が突然発表されたため、先生達が大挙してSEDUCAに押し掛けることになりました。9日、日曜日には大統領がタリハ入りして、セレモニーを行いました。全てのコンピューターには大統領の写真がはってあるとか。
7日木曜日からSEDUCAの入り口前には長い列ができ、建物の中に入ればごったがえす先生達の間をすりぬけて自分の部屋へ行かなければいけないありさまです。一緒に働いている先生達にたくさん出会いました。そのうちの1人はここまで自己宣伝をする大統領は初めてだわ、とため息をつきつつ書類を得るための列に並んでいました。この行為も教員の視線をTIPNISからそらすためだとしたら、大統領(もしくは側近?)は結構知能犯かもと、思ってしまいます。配布を決めたのはかなり前、配布の日程は突然、でしたから。コンピューターはあくまで貸与であって、贈り物ではない、というところに一抹の希望をもちたいところです。自分の生活・仕事を見てもどれだけコンピューターに頼っているかがわかるので、この貸与は使う先生しだいで意味あるものになると思います。
前回インカ道で出会ったボリビア人の話をしたところ、オルガが言うに、タリハの田舎の村の生活がよくなったのは前年反エボ・モラレス派として更迭された前知事マリオ・コシオ(Mario・Cossio)の政策によるものが大半で、大統領の政策ではない、エボ・モラレスは上手に自分がやったことのような顔をしているだけだということです。これに騙されて多くの農民たちはモラレス大統領を未だに支持しているのだといいます。これもあり得るのかなと思えるのです。この1年と少し、ボリビアを見てきて、政治の腐敗と汚職というものは確かに存在するのだなと感じます。日本の政治がクリーンであるとは決していえないけれど、日本にはない種類の政治の私物化が確実に存在します。
以上、書き記したことは色々な噂、大家さんや同僚や友人の話、新聞、テレビやラジオ、インターネットから寄せ集めたもの。何が真実なのかは私にはわからないのが正直なところですが、裸足で行進する人達もいるという先住民のグループが無事ラパスに着くこと、軍の標的になるようなことだけはないことを願って事態を見守りたいと思います。
政府がベニ(サン・イグナシオ・モホス)とコチャバンバ(ビジャ・トゥナリ)間に通そうとしている道路がイシボロ・セクレ先住民族テリトリー自然保護区、TIPNIS(Territorio Indígena y Parque Nacional Isiboro Secure)を横断することに反対し、先住民グループがデモ行進をし始めたのが8月。TIPNISの人々が自分たちの生活を守ろうと立ちあがったのを他の先住民たちが応援し、さらにそれをサポートとする学生、市民団体、NGOが加わって大規模なものになりつつありました。9月25日、この先住民の行進がTIPINISからラパスへ向かう途中にあるヤクモ(Yacumo)という町に到着した時、警官隊が介入し、催涙ガスなどを使用して死者、けが人、そして大勢の逮捕者がでました。行進には家族連れも多く、子供が亡くなったという話も伝わっています。ヤクモの町は行進に反対しており、この介入は先住民のグループとヤクモの人々との争いを避けるためだったと言われていますが、これにより多くの人々の同情が先住民グループに集まり、26日全国的なデモが行われたのです。総会開催予定地のサンタクルスのプラザでも大勢の人々が集まったとのことで、中央から離れ常に穏やかなタリハでも学校が休校、先生達も大勢デモに参加しました。
この事態を受けての一連の会合の延期または中止の連絡です。実際26日の昼間、テレビを見ていると騒然とした現場の様子が伝わり、本当に事態が悪くなってボランティア全員引き揚げ・・・という状況にもでもなったらどうしようという思いがちらりと頭を横切ったくらいだったので、その後まわってきた電話の内容に、がっかりはしたもののある程度覚悟はできていました。そしてその夜。大家さんオルガと一緒に見ていたニュースで、モラレス大統領が道路建設の中止を宣言しました・・・・この宣言がまた唐突。全国規模のデモに根負けしてのその場しのぎという事情が丸わかりで、年末年始にかけてのガソリン値上げ問題Gasolinasoを彷彿とさせ、モラレス大統領の評価は(私の中で)地に落ちたのでした・・・。
このTIPNISの話はデモ行進が始まった頃に前後してよく話題に上っていたし、友人の中にはこのデモ行進に参加するためにベニまで出かけた人もいます。オルガともよくニュースの話をしていました。それでもはっきりしなかったのが、TIPNISの人々の生活を保障し、道路の建設がもたらす利点を伝え、自然をなるべく損なうことなく道路を通す道はなかったのかということです。事態がここまで大きくなる前になぜきちんと話をしなかったのだろうと不思議でした。道路が通される予定地には50家族ほど、それほど多くの先住民が住んでいるわけではないと同僚は言います。それでも時間がたつにつれ、少しずつこのTIPNISにまつわる問題の複雑さがみえてきました。
大統領の言い分は、このTIPINISを縦断する道路が通されればアマゾンというジャングルに閉ざされているベニ県とパンド県の経済的発展を助けることになるということです。友人たちがベニのサン・イグナシオ・モホスを訪れた時、雨が降って道路が泥の川となりバスが動かなくなって、泥まみれになりながら次の村まで歩いたとのことでした。さらに奥のパンド県へ行くのはもっと難しいのです。アクセスがよくなれば生活の基本である教育や医療の手もより届きやすくなります。道路の建設が実現できればベニ県にあまりあるおいしい牛肉(トリニダ在住の仲間談)をはじめとした特産物を簡単に都市部に輸送できるという利点もあります。自然破壊ということを考えれば、道路が通されない方がいいけれど、これはこうした道路によってもたらされる生活の便利さを享受している町の人間が一概にどうこう言えないことだと感じます。
先住民の人々の心配は道路の建設に伴う人の移動です。ボリビア高地で行われているコカの栽培は土地の劣化に伴い、生産量が減少しているという話もあり、道路ができることでTIPNIS内にコカ栽培者が入植し、コカを生産し始めるのではないかと心配しているのです。コカの栽培を行うのは主にアイマラの人々であり、その合法性を認めているのはアイマラ出身の大統領です。これにより大統領は国際的な非難をあびてもいます。入植者がTPINISに入って来始めた頃、入植者側代表者としてTIPINIS側の代表者と交渉をしたのは大統領にある前のエボ・モラレスだったそうで、入植者側(多分コカ栽培を行うアイマラの人々側)であるモラレスが今大統領であるという権力にものを言わせて、自分の代表する民族の利益のために働いているととられても仕方ないといえます。そして実際にそういう部分はあるのだと思います。そうなると大統領が言うベニとパンド県、TIPNISの人々の発展のためという歌い文句がうさんくさく聞こえてきます。TIPNISの先住民は土地を奪われる可能性もあるのです。加えて、今回の工事を落札したのはブラジルの会社。TIPNIS内には石油があり、その採掘と輸送、そしてボリビアの安価な品物と労働力をブラジルにいれるために道路をつくりたがっているという話もあります。石油関係の人間のためどころか、麻薬密売人のための道だという人もいます。
同僚はTIPNISの先住民たちは僻地での自分たちの生活をかえたくない、なぜなら僻地であるからこそ各国のNGOが入ってくるけれど、道路が通ってしまえば生活が変わってしまい、援助が届かなくなることを恐れているのだと言います。援助が途切れることを恐れているかはともかく、私たちの目からみて「文明化」されていないにしろ、彼らが慣れ親しんできた昔ながらの自分たちの暮らしを変えず守りたい気持ちは何より強いものでしょう。そしてNGO等によって行われた調査によると、この道路の建設が世界で最も豊かなものの1つと言われるTIPNISの多様な生物種に与えるダメージは相当大きいとのことです。
一方モラレス大統領はこの先住民の行進は反米を大っぴらにしている現政権を転覆させようとするアメリカやアメリカの息のかかったNGOが扇動しているのだと主張しています。必ずしもTIPINISの先住民の願いを体現したものではないと。ボリビアに来る前、アメリカがいかにラテンアメリカ諸国の政治経済に介入してきたか、アメリカの多国籍企業がどれだけ搾取を続けてきたかという本を数冊読んできた私には、これも実際のところありえるのかもしれないと思ったりもします。けれどもこれがTIPNISの人々の主張を無視する理由にはなりません。
ボリビアにはアイマラ・ケチュアなど多数派の先住民、TIPNISの人々をはじめとする少数の先住民、先住民の枠でくくられないボリビア人・・・それぞれの間で色々な考えの違いがあり、そこが多民族を抱えるボリビアの難しさなのだと改めて感じます。同じような問題がタリハでおこったら、タリハの人々の反応も全然違ったものになるはずです。周辺国やその他の国、NGOや企業、それぞれの利益団体にそれぞれの思惑があります。それでも少数の先住民のために多くの人々が立ちあがり、関心をもっていることはいいことだなと感じます。
大統領はボリビア多民族国家と国名を改め、ボリビアの数多い先住民の権利を尊重するそぶりを見せながら、結局自分の出身民族であるアイマラ族のことしか考えていないのだという批判をタリハでよく耳にします。外向きの言葉だけいいから諸外国はそれに騙されていると。先日オルガのお姉さんエルヴィラとドイツ人の旦那さんのヴォルフカンと話していた時、エボ・モラレスが自然保護区、もしくは先住民テリトリーに関する法律を変える法案を議会にかけていると言っていました。国連で母なる大地(Madre Tierra)の権利について演説してきたばかりの大統領がこの行動。矛盾する言動が多くて、大統領への信頼が失われていくのがわかります。
10月11日現在も先住民の行進は続き、まもなくラパスに到達しようとしています。この行進を止めるため、軍が出動する可能性は十分あり、そうなったとき惨劇は避けられないとオルガは心配しています。今までの思いつきだけのような行動から多少まぬけな?印象があるけれど(オルガいわくエボ・モラレスは高校も卒業しておらず無学なのだとか)、エボ・モラレス大統領のMAS党は議会の大半を占め、軍部との折り合いも良好。この法案を通すことはたいして難しいことではなく、これを契機に彼がより独裁者としての要素を強めていくことも考えられます。「先住民出身初の大統領」という言葉に込められた希望をエボ・モラレスが裏切らないでくれるといいなと思います。
TIPNISの先住民を後おしするために行われた26日のデモ。教員組合はじめその他の組合も参加して大きなものになりました。反モラレス大統領の動きが大きくなったともいえます。突然の道路建設停止宣言はこれをおさえるためと思われます。この後10月6・7日にもデモが行われるとか、行われないとかいう噂があり、多くの学校が休校になっていました。これがなんのためのデモかは、実際あまりにもデモがしょっちゅうありすぎてボリビア人達も興味を失っているのか、同僚もニュース見なかったからわからないわ、と言うほどで、はっきりしないまま。TIPNIS関係ではないらしいのですが。
折しも、この日職場SEDUCA(教育事務所)は大勢の先生達でごった返し、友達からSEDUCAで(に対して?)デモがあるの、と聞かれたくらい。実はエボ・モラレス大統領が教員1人1人にコンピューターを配布することを決め、これを手に入れるために必要な書類を求めて先生達がやってきているのです。例のごとく、コンピューター配布の日程とその方法が突然発表されたため、先生達が大挙してSEDUCAに押し掛けることになりました。9日、日曜日には大統領がタリハ入りして、セレモニーを行いました。全てのコンピューターには大統領の写真がはってあるとか。
7日木曜日からSEDUCAの入り口前には長い列ができ、建物の中に入ればごったがえす先生達の間をすりぬけて自分の部屋へ行かなければいけないありさまです。一緒に働いている先生達にたくさん出会いました。そのうちの1人はここまで自己宣伝をする大統領は初めてだわ、とため息をつきつつ書類を得るための列に並んでいました。この行為も教員の視線をTIPNISからそらすためだとしたら、大統領(もしくは側近?)は結構知能犯かもと、思ってしまいます。配布を決めたのはかなり前、配布の日程は突然、でしたから。コンピューターはあくまで貸与であって、贈り物ではない、というところに一抹の希望をもちたいところです。自分の生活・仕事を見てもどれだけコンピューターに頼っているかがわかるので、この貸与は使う先生しだいで意味あるものになると思います。
前回インカ道で出会ったボリビア人の話をしたところ、オルガが言うに、タリハの田舎の村の生活がよくなったのは前年反エボ・モラレス派として更迭された前知事マリオ・コシオ(Mario・Cossio)の政策によるものが大半で、大統領の政策ではない、エボ・モラレスは上手に自分がやったことのような顔をしているだけだということです。これに騙されて多くの農民たちはモラレス大統領を未だに支持しているのだといいます。これもあり得るのかなと思えるのです。この1年と少し、ボリビアを見てきて、政治の腐敗と汚職というものは確かに存在するのだなと感じます。日本の政治がクリーンであるとは決していえないけれど、日本にはない種類の政治の私物化が確実に存在します。
以上、書き記したことは色々な噂、大家さんや同僚や友人の話、新聞、テレビやラジオ、インターネットから寄せ集めたもの。何が真実なのかは私にはわからないのが正直なところですが、裸足で行進する人達もいるという先住民のグループが無事ラパスに着くこと、軍の標的になるようなことだけはないことを願って事態を見守りたいと思います。