「僕はね、自分の分身がほしいと思うことがあるよ。」
日本に5年住んで、数年前にタリハに戻ってきた友人家族の息子ルイス君10歳のかわいい言葉です。「1人はここタリハに住んでいて、もう1人は日本にいるんだ。で、僕はその二つを行ったり来たりする。もう一人増やしてアメリカに住むのもいいな。」最後はアメリカンロック好きのルイスくんらしい言葉。ボリビアでの日々も後3ヶ月となって、軽く帰国ブルーにはいっている今日この頃。1月は行き、2月は逃げ、そして3月は去りつつあり・・・。なかなか追いつけないけれど一瞬一瞬のかけがえのない時間を少しでも言葉にして残していきたいと思います。
まずは逃げて行った2月のメインイベント。やっぱりカーニバル。昨年はタリハで過ごしたこの休暇中、今年は南米三大祭りと言われ、UNESCOの無形文化遺産にも登録されているオルロのカーニバルへ出かけました。オルロに住む仲間のアレンジでコリマッタスというグループに他の仲間とともに混ぜてもらって踊ることになったのです。練習のため前日お昼時にオルロに到着。名物チャルケカン(干して揚げて割いたリャマ肉にチーズ、茹でたじゃがいも、茹で卵とでっかいトウモロコシのようなモテを添えたもの)を食べ、お世話してくれるコリマッタスの伯父さんとともにメルカドへ出かけます。サンダルや帽子、それにつける羽やら組みひもやらの飾りを買いにいくのです。そして夕方ちょこっと練習、大地の女神パチャママに捧げる儀式に参加、夜は遅くまで買ったサンダルにせっせと毛糸をまきつける作業をしました。足が痛まないように。
翌日2月18日、本番。標高3700mのかつての鉱山の町。いつもどんよりと憂い顔だけれど、カーニバルのときは一変。ボリビア中から踊りのチームが集まり、朝早くからありとあらゆるボリビアのフォルクローレを踊りまくります。カーニバルで踊るためには厳しい審査を通り抜けなければならないこともあって、踊りはもちろん衣装にも気合をいれて参加します。コリマッタスは1980年代から参加を始めた総勢200名のグループ(それでも小さいほうだそう)。私たちはこの一員としてだからカーニバルに参加させてもらえるのです。2時ころに踊り始めるはずが相変わらずのボリビア時間、エントラーダ(入口)に入ったのは夕方4時。ここから2時間あまりノンストップ。休んだりなんかしたらそこ踊れ~って言われたりもするから、踊り続けないといけないよと警告されていたからちょっとドキドキ。幸いぎらぎらした太陽がかげって快適に。
いざ入場。踊り始めたら沿道からの応援がすごい。踊りはサンポニャーダといって斜めにとッとっと、反対方向とっとっと、笛の合図でくるくるというたいそうシンプルなもの。ステップの数も多くありません。もちろん、全員が揃って踊るためにはある程度の練習が必要なのですが、そのあたりは日本人ということでご愛嬌。とっとっとーと観客席に近づくと大喜びしてくれるのでとにかく笑顔を振りまきます。ときにはビールをふるまわれ、ときに写真を一緒にとってくれとせがまれながら、徐々に沿道をすすみます。と、「大統領!」と誰かの声。見ると人の少ない観客席にエボ・モラレス大統領がいました。そしてなんと私たちの呼びかけにこたえて、沿道へおりてきました。一時大統領と手をつないで輪になって踊って、ちょっとミーハーな気分を味わいました^^。タリハに戻ってから、テレビに映ってたわよ~と学校の先生達に言われました。この時のものかな?
道はやがて上り坂となり、遥か上に目的地ソカボン教会がみえます。もうひと踏ん張り。教会前で最後のアピールをして、終了です。踊り終わった踊り子はみな教会の中へ。膝をついたままで祭壇まで進み、神父の祝福をうけ、聖母子に無事踊り終えた感謝の気持ちとこれからの息災をお願いして終了です。もっともカーニバル自体は火曜日まで続き、日曜日はほぼ全グループ、月・火曜日も特定のグループは踊りをつづけます。私たち日本人総勢7人はこれであがり。教会を出た後はのんびり夕食をとってから、夜まで続く踊りを見に出かけました。沿道周りに隙間なく並べられた観客席によじのぼってティンクやカポラレ、モレナダ、スリ・イ・シクリなどボリビアのフォークローレの数々を見物。華やかでカッコよくて、そしてボリビアの土着の神とキリスト教の融合を感じて、来てよかったなと思いました。
さて、ボリビアのカーニバルにつきものなのが水かけ。普通に歩いていても、通りすがりの車から、獲物を求める子供たちから、水鉄砲で攻撃されたり、水風船を投げられたりするからなかなか油断できません。オルロで踊った翌日は首都スクレへ向かいました。乗り継ぎで空港だけしか知らないコチャバンバ経由で行きたいと我がままを言ったら、これが大失敗・・・。夕方のバスの時間まで有名な巨大キリスト像に行ったまではよかったのだけど、スクレ行きのバスは一杯で近くの町ポトシへ行かないとダメなことになり、カーニバル中の日曜日の午後、店は全て閉まっている上、酔っ払いの車から泡スプレーをかけられるわ、水風船をぶつけられるわ、 その上雨までザアザア降ってくる・・・。腹は立つし、寒いし><
とはいえ、バスターミナルで名物シルパンチョを食べる頃にはすっかり機嫌はなおって、同期のあきちゃんとあまりの弱り目祟り目に笑いまででてしまったほど。あきちゃんの持っていた、おうちの人が送ってくれたというアンアンの占い特集をみながらバス出発まで楽しい時間を過ごしたのでした。そしてこの後の楽しみはボリビア初体験、噂の3列シート、超豪華なbuscama(寝台バス?)です。私がよく利用するタリハ発のバスになぜかこのブスカマ(カタカナで書くと違うものみたい)はありません。普通のちょっと座席が倒れるだけのバス。一度だけsemicama(セミカマ、ノーマルとブスカマの間)に乗ったことがあるだけと言ったらあきちゃんがぜひブスカマに乗ってほしいと言ってくれたのです。びっくりしたことにコチャからでるバスのほとんどにセミカマやブスカマあり。コチャバンバーポトシ間はせいぜい11時間程度。タリハーラパス、タリハーサンタクルス・・・どれも18時間はかかるのですけど。でも快適すぎてか11時間の旅の間あまり眠れませんでした。未舗装のゴンゴン揺れが響くノーマルのバスでないとダメな体になってしまったのか。20日朝7時到着。ポトシからスクレ行き乗合タクシーに乗り込みました。カーニバル休暇後半戦・・・