2010/08/12

タリハ人

Dia de Patrio

 タリハに着いて早1ヶ月。
毎日が慌ただしくも楽しく過ぎて、ボリビアという国、そしてタリハ県の豊かさに目を見張る日々が続いています。 途上国であることに変わりなく、車や洋服などは輸入物がほとんど、そしてその大半が中古品で品質は決してよいとはいえません。貧富の差は激しく、町から一歩でた農村の貧困状態は厳しいものです。交通アクセス・衛生・教育面などまだまだ課題が山積みです。

けれども、タリハ県だけでも標高3800mの乾燥しきったSamaの山近辺から、1800mに位置する穏やかなタリハ市、そして夏には気温が40度以上になる緑あふれるYacuibaやBermejoといったGran Chacoの町など多様な気候・風土に恵まれ、市場へ行くと県内初めコチャバンバやサンタクルスなど各地から届けられた豊富な野菜や果物が並び、牛や豚、鶏の肉の大きな切り身がずらりと掛けられています。
そして何より人々には明るい活気があって、自分の住む場所で逞しく生きようとする力を感じます。

Samaの山を車でひたすら登って1時間、タリハの町は遥か遠い下

小規模でかつ京都のように縦横の区画がはっきりとしたタリハの町は地図さえあれば歩きやすく、また道行く人も親切です。「ここから2ブロック行って、左に曲がって3ブロック・・・」と道の名前をつぶやき、指を折って数えながら腕をとらんばかりにして教えてくれます。職場の行き帰りの道を変えてみたり、パン屋さんや市場で新しい食べ物を試したり、お店の人とちょっとした会話をかわしたりして少しずつ慣れてきました。町が小さいこと、そしてカトリック教会の影響が大きく家族制が強いお国柄だけあって、人々はお互いをよく知っています。知り合った人の話をすると、誰々の叔母の娘だとか、甥の誰々と以前付き合ってたとか、誰々がつくっているempanada(肉や野菜をつめて揚げたパイ皮包み)なら大丈夫だ、などのコメントがよくでてきます。

タリハの旗を掲げて行進
 比較的白人系が多いせいか、タリハ人は悪く言えば閉鎖的、タリヘーニョ(Gran Chacoの人々はチャケーニョ)であることに強い誇りを持ち、中央政府、現モラレス政権には批判的です。犯罪があっても悪い人たちはみなラパスやポトシ、もしくはペルーからやってきた人たち、タリヘーニョのはずがない、なんていいます。温暖で住みやすいタリハには厳しい高地のポトシなどから多くの人々が移り住み、もとからの住民に騒動を引き起こしている模様。新しく移住してきた人たちの中にはケチュア語しか話せない人たちもいて学校現場にも様々な問題がおきているようです。                       タリハの旗を掲げて行進

音楽や食べ物・・・家族が住んでいるという人も多く、国境を接したアルゼンチンの影響は濃厚です。この間はタリハはボリビアでなく心はアルゼンチンなんだ、とオルガが熱弁をふるうので、モントリオールはフランスになりたくて独立運動をおこしていたし、タリハはアルゼンチンに入りたがるし・・・なんで私が住むところはいつも・・・?と大笑いしました。歴史的な経緯と相まって、どの場所にもそこに住む人々の思いがあり、興味深いです。

 日本への感情はとてもよく、美しくきちんとして、たくさんお金があってテクノロジーが発達しているいい国だといってくれます。これは職場の人たちや日本と関わりのあった人たちだけでなく、携帯にチャージをしようと入った小さな店でも言われたりするから、一般的な印象のようです。中国製のものは安いけどすぐ壊れる、その点日本のものは長持ちして美しいから高いけど手に入れたい、でも最近あまり入ってこないんだ、と肩をすくめたりします。中国の人たちには申し訳ないけど、ちょっと嬉しかったり、鼻が高かったり。日本の技術者、職人さんに感謝です。日本を出たとたん日本人というアイデンティティを意識せざるを得なくなる、自分の感情もおもしろいことです。タリヘーニョを笑ってもいられない・・・

町を歩けば常に視線を感じ、Chinita,Chinita(サンタクルスではオキナワやサンファン移住地が近いためかJaponesaといわれることの方が多いのですが)と声をかけられるラテン・アメリカでは、様々な人種が闊歩する北アメリカやヨーロッパの大都会とはまた違った自意識を感じます。子供には笑顔で、若者相手には「ふんっ、若造が」と笑い飛ばし、握手を求めるおじさんには失礼にならならない程度に対応しつつ・・・珍しいアジア人として優遇されたり、注目されたりする利点を仕事に生かしていかねばと思います。

 ブドウとワインの町Valle de Concepation、グアラニーやマタコの人々がその文化を守って暮らすEntre Rios、Iscayachiをはじめとする数々の自然保護公園。これから行ってみたいところがたくさんです。外国人として外から見る目と、限られた時間だけれどもここタリハで暮らす者としての内からの視点を意識しながら、ボリビアを見つめていきたいと思います。
Dia de la Patrioの日、Desfilar(行進)した後え職場の人々と